14年前、市川ケーブルテレビで、近くにフラワーアレンジメント教室があることを知り、体験レッスンに参加してみた。体験して、フラワーアレンジメントがこれから私のやりたいことだと確信する。そして、続けているうちに、いつか、娘が結婚するときには、自分の手作りのブーケを持たせてあげたいという夢を抱くようになる。
初めて本番のブーケを作ったのは8年前の息子の結婚式で、お嫁さんの紫のカラードレスに合わせて淡いイエロー系のラウンドブーケを作る。ラウンドブーケとはどこから見ても全体が丸いブーケである。このブーケは、押し花にする加工を頼み、お嫁さんが「お母さんの作った初めての本番ブーケだから。」と言って、私にプレゼントしてくれて、今もわが家に大切に飾られている。
その後、娘の後輩からは、赤とピンク系のブーケを頼まれたり、また、島根に嫁ぐことになった娘の友達には、淡いピンクとパープル系のグラデーションカラーのブーケを作り、広島の結婚式場まで送ったこともある。これらのブーケは、プリザーブドフラワーで作った。プリザーブドフラワーとは、特殊液につけて加工したもので、水が要らない花である。
そして、今年7月末に娘の結婚式が決まり、いよいよその準備が始まる。
ブーケは花嫁の持つ花束。そのいわれは、昔ヨーロッパで、男性が女性にプロポーズするときに、野の花を摘んで花束にして渡したことがブーケの由来だそうである。また、花束を贈られた女性が、結婚を承諾する返事として、花束の中から1輪の花を抜き取って男性の胸にさしたものが、新郎のブートニアの由来になっている。
まず、ブーケを選ぶには、一般的には身長や体型、そしてドレスに合わせて考えることが必要である。娘の選んだお色直しのドレスは、全体的に花模様があるようなイメージのドレスで、1色ではなく、いろいろな色が入っている。どんな色を合わせればいいか悩んだが、ピンクを主にしたグラデーションのラウンドブーケにする。
また、カラードレスの髪飾りと新郎のブートニア、そしてもう1つブーケプルズの小さいブーケも作成する。ブーケプルズとは、ブーケに人数分のリボンをつけておき、未婚の女性ゲストに引っ張ってもらうものである。その中の1本だけのリボンが繋がっており、引き当てた人には幸運が訪れ、次の花嫁になれるというものだ。すべて、プリザーブドフラワーで前もって作っておき、数日前に式場に搬入する。
それから、結婚式前日に挙式用の生花のブーケを作る。白いウェディングドレスには、娘の希望もあり、白とグリーン系のブーケに決める。私にとって、生花のブーケは初めて作るものだ。7月の暑さを考えたら、生の花なので、結婚式の間、きれいにもつかどうかと心配で、あまり丈の長いブーケは無理かとも思う。
しかし、私の作りたいものは、キャスケードブーケだ。キャスケードブーケは、滝が流れるような優雅なブーケで、教会では白とグリーンのスタイルが正統派とされている。やはり、後悔しないように自分の考えていたブーケを作ろうと思う。クーラーをきかせた部屋でバラ、トルコギキョウ、デンファレ、ラークスパー、リキュウソウの花材で作っていく。ブートニアは作成した後、キッチンペーパーを湿らし、ブートニアにかけて、その上にラップを覆い、冷蔵庫の直接冷気のかからない場所に置く。
次の日の早朝、ブーケとブートニアと、そして念のため、メンテナンスのお花も抱えて、タクシーで結婚式場へ行く。
挙式で新郎がブートニアをつけて入場し、娘がウェディングドレスにブーケを持って入ってきたときには本当にほっとする。ふわっとしたプリンセスラインの白いドレスにはキャスケードブーケがよく似合う。入口のところで、私がベールダウンをして、ちょっと緊張気味の主人と歩く娘の姿、そして、その後ろには長いベールを持って2人の孫たちが歩く。お色直しのカラードレスにもピンク系のブーケが、可愛らしい感じで似合っていてうれしい。披露宴では、サプライズで花嫁のエスコート指名が私にあり、ブーケの制作者として紹介される。インタビューもされ、ずっとお花を続けてきて本当によかったと思う。
そして、たくさんの方々に2人が祝福されて、無事に挙式、披露宴が終了したときには心から安堵の思いがこみあげた。おかげでメンテナンスの花も使わずに済んだ。
ちなみに、ブーケプルズでブーケを引いた人は娘の後輩で、何と2次会ゲームで1位の景品ディズニーランドペアチケットも当たった幸運の持ち主である。これは偶然なのだが、娘が幸せになってほしいと思っていた後輩だったことと、後でこの結婚が来年の5月に決まったと聞いて本当に驚いた。
こうして、新しい未来へ旅立つ娘へ幸せをこめてブーケを作ることができ、母としての長年の夢が叶う。ここに至るまで、長い間ご指導をいただいたケイステージの菊池初美先生には感謝の気持ちで一杯である。 先日、頼んでおいたキャスケードブーケとブートニアのきれいな押し花の額が届いた。これは、2人の結婚の記念にと私がプレゼントしたものだが、みんなに見てもらいたいという娘の希望で、わが家に飾る二つ目のブーケの押し花になった。いまも感動の余韻に浸っている。